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消費増税、病院経営を圧迫 「8%」ショック
2015-08-25
消費増税、病院経営を圧迫 「8%」ショック
その他 2015年8月24日(月)配信朝日新聞
 

 

 「今年度は10億円の赤字です! 節約しませんか? ペーパータオルはたくさん取らずに1枚だけ」

 千葉市の千葉大医学部付属病院(ベッド数835床)の職員用トイレにはこんな貼り紙がある。

 2014年度決算は7億円の赤字だった。04年度に国立大学法人になって初の赤字。消費税率8%への増税が病院経営を直撃した。

 公的保険の医療サービスは消費税が非課税だが、病院が仕入れる物品には消費税がかかる。今回の増税で千葉大病院は消費税の支払いが5億円増えた。診療報酬による穴埋めを差し引いても2億円の負担増だ。

 赤字対策としてあらゆる経費節減に取り組む。残業を減らすため、従来は午後6時や7時に始めていた医療スタッフの会議を5時開始に早めた。手術用の帽子や注射器などは千葉市立の2病院と共同購入し、単価の引き下げを図る。

 薬はもともと安い後発薬を優先してきたが、さらに徹底し、7月には後発の比率が80%に達した。2月には3本目の井戸を稼働させた。病院で使う水の8割が地下水となり、年間1千万円の経費を削った。

 山本修一院長は「大学病院は最先端の医療に携われるから人材が集まる。しかし、最先端の医療機器を導入すればするほど消費税の負担が増える。必要な投資なのに後ろから撃たれているような感じだ」と窮状を訴える。

 苦しいのは私立も同じ。川崎市の聖マリアンナ医科大学病院(1208床)では、診察室のパソコンの電源を入れると「XP」の文字が浮かび上がる。米マイクロソフト社の基本ソフト、ウィンドウズXPのことで、昨年4月、顧客へのサポートを終了した。同病院は更新する予定だったが、延期して約20億円の経費を浮かせた。院内だけのシステムで、大手パソコンメーカーの協力を得ているので問題はないという。

 さらに業務委託していた看護助手は、直接雇用に切り替えた。委託費には消費税がかかるからだ。

 医師らの人件費に切り込む病院も出てきた。千葉県鴨川市に拠点を置く亀田総合病院グループ(992床)は、職員のボーナスを5~6%引き下げた。14年度の消費税支払額が前年度より約4億円増。これは前年度の税引き前利益約1・5億円を上回り、赤字が現実味を帯びたからだ。

 亀田隆明理事長は「国は診療報酬に消費税分が含まれるというが、消費税を正しく反映することは不可能だ。大きな設備投資や医療材料を多く使う基幹病院ほど負担が重い」と話す。

 首都圏のある医療法人の理事長は、この1年間で10の病院から「買収してもらえないか」と打診があったと明かす。「都心の100床以下の病院は、同じように収益を圧迫されている周囲の大型病院に患者を取られて大変なようだ」

 

 医療と同様、介護保険のサービスも非課税のため、物品購入にかかる消費税が重荷になっている。

 東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「博水(はくすい)の郷(さと)」では、8%への増税で年間の消費税支払いが約600万円増えた。光熱費やリネン、おむつなど仕入れる物品のほぼすべてに消費税がかかる。送迎車の運転も業務委託なので、委託費に消費税が乗ってくる。

 政府は介護事業者の負担増を穴埋めするとして、増税時に介護サービスの公定価格である介護報酬を0・63%引き上げた。だが、博水の郷の介護報酬は約300万円しか増えなかった。田中雅英施設長は「全く足りません」と話す。

 コスト削減のため、3月から事務職員を1人減らし、残りの6人が残業でカバーする。照明はLEDに切り替え、近く節水装置も導入する。福祉施設の経営に詳しい宮内眞木子税理士は「全国的に見て、消費税がかかる物件費は費用の25%くらいある。0・63%ではちょっと足りない」と指摘する。

 

■輸出には消費税を還付

 輸出品は海外で売る時にその国で課税されることを考慮して、消費税をかけない。かけないのは「非課税」の医療・介護と同じだが、輸出は「免税」と呼ばれ、「仕入れ税額控除」を使えるのが特徴だ。

 一般の商品の場合、小売店などは消費者から受け取った消費税から、仕入れで卸売業者らに支払った消費税を引いた差額を納税する=図。この差し引く仕組みが仕入れ税額控除だ。

 輸出が多い企業は、仕入れ税額控除を使うと、受け取る消費税より支払った消費税が多いので、その差額が税務署から還付される。一方で医療・介護はこうした還付がない代わりに、診療報酬や介護報酬で穴埋めする仕組みになっている。

 2014年度の消費税還付金(地方消費税分を除く)は3・4兆円で、税率5%だった前年度から1兆円近く増えた。大半が輸出によると見られる。国の消費税収約16兆円は、還付金を引いた残りだ。

 大手自動車メーカー5社が受け取った還付金を元静岡大教授の湖東京至(ことうきょうじ)税理士が14年度決算などを基に推計したところ、計6千億円だった=表。前年度より2707億円多い。税率が10%になればさらに膨らむ。

 各社は受け取った還付金額を開示していない。トヨタ自動車は「輸出取引は消費税を受け取ることができないため還付を受ける。法に基づき適正に処理している」(広報部)と説明する。日産自動車は「(医療など)非課税取引も還付の対象にすべきではないか」(同)と話している。

 自動車部品などの下請けメーカーは、納入先に消費税を転嫁できれば負担増にならないはずだが、異なる実態もある。

 ある下請け部品メーカーは、当初増税分を売値に転嫁できたが、その後のモデルチェンジの際に実質値下げをのまされたという。「納入先が消費税を払ったといっても、その分、値下げされたら、下請けは自腹で消費税を納税しているのと同じ」と社長は言う。

 

■実態とずれ、見直す動き

 《解説》病院や介護事業者の仕入れにかかる消費税負担は、診療報酬や介護報酬の引き上げで穴埋めする方法をとってきた。今回の増税を機に病院などの不満が噴出したのは、報酬での穴埋めが実態とずれ、配分が偏るなど、制度上の不備を無視できなくなったからだ。

 厚生労働省は実態調査を踏まえて報酬を決めてきたが、消費税が絡むすべての取引を報酬で網羅するのは難しい。今回引き上げたのは約7千項目の診療報酬本体のうち初診料や再診料、入院基本料など一部だ。このため物品購入や設備が多い医療機関ほど穴を埋めきれなくなる。一方、比較的簡単な診療が多い開業医などは穴埋め分より過剰に配分される可能性がある。

 制度を見直す動きもある。日本病院会などでつくる四病院団体協議会は昨年、日本医師会と連名で消費税問題の抜本的解決をめざす税制改正を要望。この春から医療界、厚労省、財務省も加わって問題解決に向けた検討を始めている。

 輸出品のように、支払った消費税を後で差し引いたり還付したりする仕組みなら透明で問題は生じにくいはずだ。このため医療界には控除や還付を求める意見が強い。税率については免税や軽減税率、標準税率まで意見が分かれている。非課税を続けながら新たな病院支援策を求める声もあり、一枚岩とはいえない。(高谷秀男、松浦新)

朝日新聞デジタルselect

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